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教員リレーエッセイ

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初心忘るべからず


2023年1月10日更新
年末年始、皆さんはどのように過ごされましたか?移動や行動の制限が緩和されつつある中、久しぶりの帰省や旅行、家族や友人との時間を楽しまれた方が多いのではないでしょうか。しかしながら、withコロナと言われる今、新しいコミュニケーションが広がり、一人ひとりがそれぞれの価値観や多様性を活かした方法を選択できるようになっていると感じます。さまざまなSNSやアプリケーションが利用される中で、オンラインでのコミュニケーションの機会が増え、利点を感じることも多いでしょう。このような流れの中、やはり人と人とが「直接会う・聞く・話す」ことで得られる温もりや喜びなどは「人が生きる」原動力になるものと強く感じています。

私が理学療法士になって、大学病院に勤務していた時、指導してくださった先輩からの教えで忘れられないことは、患者さんとの接し方、コミュニケーションです。未熟な新人理学療法士には、治療のための知識や技術を高めるために日々指導を受けることや研鑽を積むことは重要です。知識や技術なしに、患者さんと向き合うことはできませんが、患者さんに寄り添い、抱えている苦痛や困難を受け止めたり、生活への希望や要望を共有したり、とコミュニケーション力がなければ、良好な信頼関係を築き、より良い治療を実践することができません。私自身「患者さんのために」という思いを常に念頭に置いて接していましたが、先輩からは患者さんへの接し方について、厳しく指導を受けることがありました。私なりに患者さんとのコミュニケーションには気を配り、丁寧な対応をしていたつもりでしたが、業務の効率なども求められる臨床現場で、患者さんに寄り添う態度や行動、発言などが十分にできていなかったことに気づかされました。理学療法士として、どう患者さんと向き合っていくか、試行錯誤の毎日でした。経験を重ねていく過程で、礼節から言葉遣い、身体への触れ方、評価・治療に関連するさまざまな研究データに基づく確かな知識や技術も含めた総合的なコミュニケーションが、その人を「診る」ことである、と実感しました。主体は自分ではなく、患者さんであることがコミュニケーションの前提であることも。
大学教員となってからも、「コミュニケーション」は学生と一緒に考えたり、学んだりする機会が多いキーワードです。医療専門職者の教育において、自分が経験してきたことを伝え、理学療法士としての土台を築く支援をしたいと考えています。

人と人との関わりで育まれる温もりの輪が広がっていく1年になればと願い、初心に返り、決意を新たにしています。