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教員リレーエッセイ

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今の時代に慢性疼痛を学ぶこと


2022年7月10日更新
最近、慢性疼痛について社会でも取り上げられています。厚生労働省の調査によると、痛みを訴える国民は多く、近年の研究により新たな治療方法が報告されつつあります。
私は理学療法士として、病院やクリニック、施設等で痛みの患者さんを治療してきました。痛みの原因は患者さんによってさまざまです。治療すべき対象を決定するには多くの臨床評価を実施する必要があり、その結果に基づいて臨床推論を行い、治療方法を選択します。痛みの治療方法は多岐にわたり、即時的な効果から漸次的な効果があります。重度な痛みの患者さんは、治療後に治療前とは別の部位の痛みを訴えることもあります。 これは、痛みを長く感じ耐えてきた生活によって、さまざまな影響が患者さんの身体に生じているためです。
筋肉や関節、筋膜、神経、内臓など、痛みを生じる可能性のある部位は、多様です。患者さんは、痛みを感じると身体の痛みだけでなく、心も落ち込みます。
2020年に痛みの定義は「痛みは、実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」と改定され、身体に傷がなくても起こりうる痛みの存在が明確になりました。痛みは常に個人的な経験で、生物学的、心理的、社会的要因によってさまざまな程度で影響を受けます。痛みと侵害受容は異なる現象で、感覚神経の活動だけから痛みの存在を推測することはできません。痛みには、複雑さがあります。痛みの治療は、「痛み」に対する深い知識と技能および技術が必要です。
医療は、日進月歩です。私は、患者さんの痛みを改善するためにペインリハビリテーション分野の臨床と研究を、学部生や院生、さらに本学を卒業した痛みゼミの皆さんと、日々取り組んでいます。私は、痛みを専門とする理学療法士として、将来の医療を担う皆さんと、今の時代に慢性疼痛を学ぶことは、医療の発展に大変意義深いと考えます。