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教員リレーエッセイ

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モヤモヤする力と幸運な偶然を引き寄せる力


2024年4月10日更新
 保育・幼児教育には正解がありません。だからこそ、多様な保育実践があり、創造的な営みがあります。しかし、なんでもかんでもいいわけでもありません。では、子どもと共に過ごす専門家として、保育者にはどのようなことが求められるのでしょうか。
 私が考える“保育者として大切にしたいこと”として、「モヤモヤする力」と「幸運な偶然を引き寄せる力」を紹介します。それぞれ「ネガティブケイパビリティ」、「セレンディピティ」ともいわれます。
 保育実践の中にいると、考えることが尽きません。「この子はどんなことに興味があるんだろう?」、「あの関わりよくなかったな」、「最近子ども同士のトラブルが多いな」、「どんな保育環境がいいんだろう」、「あの人の考えていることがよく分からないな」……。考えることが尽きない上に、正解がないのですから、ぐるぐる、きょろきょろ、モヤモヤするのは当たり前です。だから保育者は、「こうかなああかな」、「こうしてみよう」、「こうなったから、もっとこうしてみたらどうだろう」……。目の前の子どもたちや環境と対話しながら、日々の保育を紡いでいきます。
 そこで保育者が、考えることを放棄したり、過去に上手くいったことをただ繰り返したりすることは、“今”との対話をやめることになります。これはもったいないと思うのです。
 モヤモヤ、モヤモヤ。考え続け、試し続けていると、急にハッとすること、思わぬ出会いや発見があります。それは、想定していなかった子どもの言葉かもしれないし、想定していなかった環境の変化かもしれないし、想定していなかった人との出会いかもしれません。こうした思わぬ出来事こそ幸運な偶然であり、それを楽しむことができるのが保育の醍醐味だと思うのです。決まりきったレールを走っていては、思わぬ出会いには気づけません。寄り道したら、意外と何かいいものに出会うかもしれません。モヤモヤは思わぬ幸運な偶然を呼び込む余白を生みます。
 私は現場を離れましたが、保育に関わる者として、モヤモヤし続けることにワクワクしていたいなと思いますし、一緒にモヤモヤする仲間が増えたらいいなと願っています。

(参考)杉山沙旺美・刑部育子. (2024). 「天然知能」の視点から捉える保育者の専門性-保育者のひらめきと生まれ続ける新たな実践の検討-. 共創学, 5(1), 10-22. https://nihon-kyousou.jp/jrn/vol5_no1/