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教員リレーエッセイ

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認知症高齢者が「その人らしく、心地よく排泄する」ことを支えるケアを探求する


2023年9月10日更新
 私の研究の最終的なミッションは、認知症になっても高齢者が一人でも多く自分らしく心地よく排泄できることです。この分野に携わるきっかけになったのは、看護師の臨床経験でした。病院では便秘の患者の治療として、3日間排便がなければ下剤を投与していました。しかし、下剤は溜まった便を排出させますが、便秘の根本的な原因を改善するものではありませんでした。むしろ、便失禁を誘発したり、認知症高齢者を興奮させるきっかけになっていました。そんな下剤の副作用に苦しむ患者を目の当たりにし、私は看護師として特に認知症高齢者の便秘を改善するケアとは何かを研究することになりました。

 研究当初は、認知症高齢者の便秘を改善するケアを明らかにするため、実際にケアしている介護現場の看護師や介護士にインタビュー調査を実施しました。しかし、調査の過程では厳しい意見もたくさん頂きました。「現場のことを全く分かっていない、下剤以外にやれる時間的な余裕はない」「排便なんて誰も興味ない、看取りとか今重要な話題の事を調べた方がいいのでは?」など批判的なコメントに心折れそうになったこともありましたが、自分が掲げたミッションの重要性を信じて研究を続けてきました。

 今では、インタビュー調査の知見に基づき、排便習慣の確立(適切な排便時間と間隔でトイレ誘導)と排便を促進する効果的な排便姿勢(足底を床につけた前傾姿勢)により認知症高齢者の便秘の改善に有効であったことを実証するに至りました(関連記事)。さらに、私の取り組みに賛同して頂ける医師、薬剤師、理学療法士、看護師、介護士など多様な専門職者の人的知的ネットワークを構築できました。これからも未知の領域に踏み込む研究を続けていく中で、困難な出来事が待ち受けているとは思いますが、協力関係を強固なものにしながら、認知症高齢者の便秘に対するケアのエビデンスを蓄積させ、老年医療レベルの発展に貢献したいと考えています。