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教員リレーエッセイ

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誤嚥性肺炎への挑戦


2023年7月10日更新
 肺炎は何十年もわが国の死亡原因の上位に位置しており、超高齢社会に伴い、今後も特に誤嚥性肺炎患者の増加が懸念されています。誤嚥性肺炎の多くは摂食嚥下障害が原因と言われていますが、摂食嚥下障害を引き起こす要因は多岐にわたり、脳卒中などの病気に関係するもの以外にも、骨格の問題や筋肉の衰えなどによっても出現することがあります。
 私は、理学療法士として病院で何年も呼吸器疾患の方を担当してきました。その中で、肺炎患者さんを担当する機会が年々増加してきていることを実感し、特に一度回復しても、またしばらくすると再発して入院が必要になる方が多かったため、どうすればこのような方々が肺炎を繰り返さないようになるかを考えながら日々取り組んでいました。そんなとき、ある文献を読んだ際に衝撃を受けたのを今でも覚えています。その研究はパーキンソン病の患者を対象として、呼吸のトレーニングを行ったところ、嚥下機能が改善したというものでした(Pitts et al. Chest. 2009)。呼吸の、特に息を吐く力(呼気筋)を鍛えると良いという報告に感銘を受け、私も同様の取り組みを始めました。自分で検証してみても、呼気筋のトレーニングは有効であることが分かり、現在もその研究を進めています。今では脳卒中などの他の疾患が原因での摂食嚥下障害でも検証されていて、呼気筋トレーニングの有効性が示されてきています。
 元々呼吸筋トレーニングは、慢性呼吸器疾患の方に対して、息を吸うときに活動する横隔膜をトレーニングすることが主流ですが、息を吐く力は咳の力とも関係がありますので、呼気筋を鍛えることは誤嚥した際の咳(むせ)での予防対策としても有効だと考えます。そのため、呼気筋トレーニングによって咳と嚥下の能力を向上させ、誤嚥性肺炎の改善に貢献できるように今後も研究を進めたいと考えています。