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教員リレーエッセイ

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ソーシャルワーク組織の再構築


2021年11月25日更新
1990年代から始まった社会福祉基礎構造改革以降、社会福祉の実践現場は改革を押し進める諸政策に翻弄され続けてきました。残念ながら、その一連の政策は実践現場を豊かにすることには作用せず、様々に変容させてきたと同時に、そのことによってもたらされているソーシャルワーカーの疲弊は、実践を脆弱化させているように思えてなりません。さらに、「変容」が問題を生み出しているという認識への鈍磨も否めず、それを見透かしたように繰り出される新たな政策が、実践現場の変容にいっそうの拍車をかけて来た20年であったと言っても過言ではないでしょう。
しかし、実践現場の状況がどのように変容しようとも、いかにソーシャルワーカーが矛盾に満ちた立ち位置に置かれていようとも、社会福祉の課題は依然としてソーシャルワーカーの目の前にあることに変わりはなく、現状を憂いても、その状況に劇的な改善がもたらされるわけではありません。いかなる状況下でも、社会福祉実践と呼ぶにふさわしい実践を展開することが社会福祉に携わる者の責務です。
私は、そのための具体的な手立ては、ソーシャルワーカー個々人が、自らを取り巻く環境(=「実践環境」)を整えることで、ソーシャルワーク(=「社会福祉実践の方法」)としての実践土壌を再構築することだと考えています。実践土壌とは、組織・機関、集団、個人に貫かれたアイデンティティであり、そこに醸成されるソーシャルワークと呼ぶに足りる価値の体現と実践の蓄積の場です。
私の研究テーマはソーシャルワークの組織論です。ソーシャルワーカーの実践環境の中でも、ソーシャルワーカーを直接的に統制している「組織」とソーシャルワーカーの関係のあり方に着目しています。 組織とソーシャルワーカー個々人が、ソーシャルワークの価値を共有し、実践に貫くことの目的意識的なコミュニケーションを模索することで、そこにソーシャルワーク・アイデンティティの構築、すなわち、実践土壌のソーシャルワーク化の可能性があると考えています。