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教員リレーエッセイ

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窒息事故ゼロを目指して


2021年9月10日更新
毎年正月になると餅での窒息事故の記事が新聞やテレビで報道されます。厚生労働省の人口動態調査での、「不慮の事故」のうち「気道閉塞を生じた食物の誤えん」による死亡者は、2019年に全国で4200人を超す数となっています。とりわけ、80歳以上の窒息事故死亡者数は2700人を超え全体の60%以上を占めています。警察庁の発表では、2020年の交通事故死者数が2839人でしたので、現在は交通事故よりも窒息事故でお亡くなりになる数がよほど多い状況となっています。消費者庁の発表では、窒息事故件数の多い食品は、もち、ごはん、飴、パン、寿司等です。通常の食品を食べた人が窒息をしており、原因として摂取者の嚥下能力と摂取食品のミスマッチが考えられます。
 しかし、私たちは歳を重ねるごとに飲み込みの力が衰えていくことを想像できても、現在どの程度の飲み込みの能力があるか知ること自体は容易でありません。そこで、スクリーニング検査として、質問紙法(大熊ら、2002)、反復唾液嚥下テスト(小口ら、2000)、水のみテスト(窪田ら、1982)などが開発されています。これらの方法を用いることによって、飲み込みの能力が低下している場合にはそれが理解できます。しかし、どのような食品を食べるべきか、どのような食品は避けた方がよいかなどの指標が得られる訳ではありません。個々の能力に合った食品選択には、ビデオ嚥下造影検査やビデオ嚥下内視鏡検査などの専門的な検査が必要ですが、専門病院を受診しなければなりません。専門病院もまだまだ数多くないのが実情です。
 そこで、私たちは嚥下能力を簡単にチェックする方法や個々の嚥下能力に合致した食物選択ができる方法を研究しています。飲み込みに使う筋活動を解析し、筋活動の個別特性を指標に客観的かつ簡便な方法の開発を目標としています。この活動を通じて窒息事故ゼロの社会の実現を夢見ています。