グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


教員リレーエッセイ

ホーム >  教員リレーエッセイ >  在宅失語症者に対する機能的訓練の効果

在宅失語症者に対する機能的訓練の効果


2021年7月10日更新
2025年モデルに向かって医療・介護分野が激変している中、生活期へのリハビリ介入は立ち遅れています。2006年の介護報酬改定で訪問言語聴覚療法の介入が可能となったものの、いまだ実施機関が少なく介入不十分な状態です。このような状況下で在宅失語症訓練ソフトの開発が必要とされています。
元来、慢性期失語症者の訓練効果はほとんどみられないとされていましたが、近年の研究では、発症から3年以上たっても効果がみられる症例が存在するなど、慢性期の失語症リハビリの必要性が認識されつつあります。ただし、これらの研究では言語聴覚士との直接の訓練を実施している患者を対象にしており、在宅訓練の主役である失語症者自身による訓練効果を示したものではありません。私が取り組んでいる研究は、言語聴覚士のいない、在宅での自主訓練の効果検証を行おうとする特徴があります。さらに、在宅失語症者に対する機能訓練が、同居し、介護している家族の介護負担感にいかなる変化をもたらすのかを調査しております。
訓練機材として、シマダ製作所と開発した在宅失語症者用訓練ソフト「言語くん自立編Ⅲ」を使用しています。これを、協力者に一定期間無料貸与して使用してもらいます。訓練プランは予め言語聴覚士が言語機能を評価し、一人ひとりに適切な「言語くん自立編Ⅲ」の利用方法を説明します。
これまでの15名の対象者への調査で分かったことは、失語症は訓練の頻度に比例して改善するということです。そして、訓練を継続していればその訓練効果を維持できることも分かりました。同時に、訓練頻度が低下すると言語機能が低下することも示されました。一方、失語症者を介護する家族の介護負担感は、コミュニケーションに関する項目の得点が高く、失語症の特徴を強く反映していると考えられました。また、失語症に対する社会の無理解や失語症リハビリを受けられる機会がないことも負担要因と考えられました。
失語症と介護負担の関係がどのように推移していくのか、長期間の調査が必要であると考えております。