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教員リレーエッセイ

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ノーマライゼーションという理念について


教員リレーエッセイVol.04を担当させていただく、社会福祉学部の佐々木です。
今回は、80年前の歴史からお話させていただきます。

第二次世界大戦下、ドイツのナチス政権がユダヤ人を虐殺した歴史はよく知られています。しかし、その前段階でナチスが、精神障がい、知的障がい、身体障がいをもった方をドイツ民族の純粋性にとって不用であるとし殺害したことは近年まで知られてきませんでした。この殺害はT4作戦と呼ばれ、殺された障がいをもつ方の数は約20万人とされています。残念なことに、この殺害にはドイツの医療福祉関係者も関与していました。本来、人の命を守る立場の専門職が、命を奪う立場になってしまいました。

デンマークにバンク・ミケルセンという人がいました。第二次世界大戦中、ナチスに抵抗するレジスタンス活動をしていましたが、ナチスに捕まってしまい強制収容所に入れられてしまいます。終戦後、ナチスの収容所から解放されて、デンマークの社会省に入省し、知的障がい者施設の担当になりました。そこで、彼は衝撃的な光景を目の当たりにします。当時のデンマークの知的障がい者入所施設は、自由な行動が制限され劣悪な環境下で100人以上が収容されていました。彼は、その施設をみて「ナチスの収容所と似ている」と感じました。彼は、このような施設の在り方を改革するため、知的障がい者の親御さんが作った「親の会」と共に1959年法という法を成立させます。その法律には、ノーマライゼーションという理念が盛り込まれました。ノーマライゼーションとは、「障害のある人たちに、障害のない人々と同じ生活条件を作り出すこと」です。ノーマライゼーションは人間の尊厳を守る大切な考え方で、やがて世界のスタンダートとなっていきました。ノーマライゼーションは、20世紀の悲惨な歴史を繰り返さないために切望された理念であったのではないかと感じます。

21世紀を生きる若い世代の方にお伝えしたいことがあります。人間の歴史は、科学が進歩しても、前述の専門職の例のように、人を敬う倫理観が揺らいでしまうことがあります。揺らいだ倫理観は、時の為政者に利用されてしまいます。揺るがない倫理観をもつために、人は生涯をかけて学ぶものだと、私は考えています。