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教員リレーエッセイ

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看護の基本は観察にあり


高校生に「看護とはなにか」を伝える授業を担当することになり、その準備のため、看護の原点に戻り、ナイチンゲールの『看護覚え書』を久しぶりに読み直しました。

私の研究のテーマは、看護師や看護学生の看護技術の熟達化とその支援です。現在は「吸引」の技術で、気道を傷つけることなく、目的の部位までカテーテルを到達させる手技を習得するための教材についての研究に取り組んでいます。看護の技術には、スムーズにカテーテルを挿入するといった熟練した手技はもちろんですが、行為に至るまでの判断のプロセスも重要です。行われる看護技術の方法はその時々で異なり、まったく同じ行為はありません。目の前にいる人は違いますし、同じ人でもその時その時で状況は異なります。看護師は、その人、その時に合わせた方法を判断して行為の積み重ねを看護技術として表現しています。そして、その人に何が必要かを判断するためには、その人をよく観察する力が必要になります。

ナイチンゲールは、『看護覚え書』のなかで「看護の基本は観察である」と述べています。患者のそばにいて変化を察知することが看護師の役割であるということは、160年たった今でも変わりありません。観察するとき、看護師は目と耳と手を使います。コロナ禍の現在、看護師をはじめ医療者は、手袋、マスク、ゴーグル、フェイスシールド、帽子、ガウンなどの個人防護具を装着して患者さんに接しなければなりません。何かを介さなければ対象に触れることができない状況で、看護師は「起きている」または「起こりうる」変化を察知することに、普段より多くの気配りをしていると思います。もちろん、触れることが許されない状況ではコミュニケーションもままならず、信頼関係を築くことにも苦慮されていることでしょう。白衣の天使といわれる看護師について、ナイチンゲールは、「天使とは美しい花をまき散らす者ではなく、苦悩するもののために戦う者である」と言っています。今まさに、このような厳しい環境において苦悩する方々のために戦っている看護師たちに感謝とエールを送りたいと思います。

看護の実践は途切れることなく、あらゆる場で実践されています。これから活躍する看護師を育てるためにも、高校生の皆さんに、やさしさだけではない看護の魅力を伝えられるよう、準備を整えて臨みたいと思います。

大学の図書館にはNotes on Nursing(看護覚え書)の初版本が展示されています

F.ナイチンゲール著、湯槇ます・薄井坦子・小玉香津子・田村真・小南吉彦 訳(2011).看護覚え書―看護であること 看護でないこと―(改訳第7版),現代社.