SIP 深い学びとルーブリック:Grade 6

SIP(Seirei Inquiry Program:聖隷クリストファー小学校独自の探究学習)における

「概念に基づくカリキュラム」について、前回 Grade1 のニュースレターを例にご紹介しました。

しかし、そもそも「概念理解」に重点を置くことが、なぜ私たちの教育にとって重要なのでしょうか。

これは、一つにはこれまでの教育が、「各教科の枠組みの中における知識・理解」を重視してきたことから説明する必要があります。

 

「学ぶ」という言葉は、さまざまなレベルの <深さ> を含んでいます。

最も浅いレベルでは、子どもたちは

 ▶︎47都道府県の名称と位置についてテストしたり

 ▶︎夏の大三角が、デネブ・ベガ・アルタイルの3つの星で構成されていると教えられたり

するかもしれません。

これらは、日本の小学校学習指導要領に記載された教科「社会」「理科」の

それぞれの内容に関連した学習であり、現在も日本中の学校でよく取り扱われているものでしょう。

(ちなみに、指導要領上は「これらの知識を暗記しなければならない」とまでは書かれていませんし、

デネブ・ベガ・アルタイルといった具体的な星の名前については言及されていません。)

 

しかし、このレベルの学びだけに触れていたのでは、

日々刻々と変化する複雑な現在社会の諸問題について、

他者と協働しながら主体的に解決に導く人は育たないでしょう。

何故なら、わたしたちの生きた世界の問題は、決して

「浜松市の面積は、日本の市区町村の中で第2位の広さである」

というような、教科の枠組みの中における単一の知識を適用するだけでは

解決しないことばかりだからです。

例えば、コロナウィルスも気候変動も、世界各地の紛争も

みな教科の枠組みを超えた問題であり、より正確に言えば、

世界は本来教科によって区切られてはいないからです。

 

つまり、私たちが教育を通して本当に世界をよりよくすることに貢献しようとするならば、

学校では、

●多様な分野・領域の知識・理解のつながりを見出し

●そこから見出した知見をさまざまな文脈(生きた世界の問題 etc.)に適用することを助ける

学びに取り組むことが求められます。

 

私たちが「概念理解」に重点を置くのは、学びをこれらの段階にまで深めていくことを意図してのことであり、

より大胆に言えば、この学校の教育を通して <世界平和> の実現に貢献したいと願っているからです。

 

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さて、ここまでお伝えしてきた内容は、小学生にとっては少し難しいと思われるかもしれません。

そして大人の方からしてみても、

「どのようにして概念理解に至る <深い学び> を実現するのか」

といった、一見して抽象的で曖昧なことに取り組む方策を、

これまでの日本の教育を受けてきた私たちの多くは知りません。

 

しかし、SCES(Seirei Christopher Elementary School)の6年生と先生方は、

これに明確で理論的なアプローチを用いて、果敢に挑戦しています。

次の写真は、6年生の担任の先生と子どもたち。

 

机上に置かれた紙に印刷されたカラフルな図表は「ルーブリック」と呼ばれる、

学習到達度を示す評価基準を、観点と尺度からなる表として示したものです。

このルーブリックで用いている5段階は SOLO Taxonomy(提唱者:John Biggs, Kevin Collins 1986 *)に従っています。

 

SOLO とは「Structure of the Observed Learning Outcome」の略で、

学習成果をその複雑さの観点から分類するための手段です。

平たく言えば、この表でいう赤の段階が最も浅い学びであり、

それが黄・緑・青と進むにつれて学びが深まっていく、ということを示しています。

こちらは探究のユニットの初回の写真ですから、

担任の先生はこれから始まる

SIP(Seirei Inquiry Program:聖隷クリストファー小学校独自の探究学習)を通して、

「子どもたちにどのような学習成果(Learning Outcome)を示すことが期待されているか」

を、このルーブリックを使って予め子どもたちと共有してから

学習をスタートさせたということです。

 

この方法には、目指す方向性をハッキリと共有することによって、

 ▶︎教科の枠を超え、広く浅く拡散し得る学びに対して、深い学びに向かう道筋をつけると共に、

 ▶︎教師と子どもたちが目標を共有することで協働することを容易にする

というメリットがあります。

ただし、当然これを用いたからといって、それだけで全ての子どもたちが

意欲的、探究的に学びに向かうようになれる訳ではありません。

 

そこで、担任の先生は、ルーブリックについて子どもたちと共有する以外に、

子どもたちの学びを動機づけるなどするための4つのステーションを設けて授業に臨みました。

(これ以降、担任の先生が連絡ツールに投稿した写真と文章で、本ユニットの学習の様子をご紹介します。)

 

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Today, we introduced our new SIP unit – How the World Works: Earth and Space.

We had 5 stations in the classroom: book station, photo station, lunar eclipse station,

rubric station and GRASPS task station. After visiting all 5 stations, the students

have been introduced to the topic, and have had a first chance to find something

that interests them personally.

One big change in this unit is that the students will have a choice on what to

make to show what they discover – a video, a poster, a presentation etc. This is a

big step as the students become increasingly independent in their inquiry learning.

 

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こちらは数日後の写真。

ルーブリックを机上に置きつつ、自分たちの力で学びを進めているようです。

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One important note: this SIP unit will include learning in both languages,

so students are able to explore ideas in English and Japanese.

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両言語を使っての探究は簡単なことではないでしょうが、思考のベースはやはり母語。

つまり、本校のような英語イマージョン校が <深い学び> に取り組む上で、

日本人と外国人の先生が協働的に探究学習に取り組むことは外せないポイントであり、

6年生の先生たちのチャレンジはそういった意味でも大変価値のあるものです。

 

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As part of our SIP unit, we have been learning about lunar eclipses and lunar

phases in science. Yesterday, the students designed their own experiments and I

was impressed by all of the original thinking that led to each group having a

different idea of how to proceed. Today, the students carried out their experiments.

I’m looking forward to our reflections on our results! Well done everyone!

 

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Today the students finished articles for the “SCES Geographic”. They wrote

about a technology developed for space exploration and how it connects to our

lives here on Earth. Tomorrow we will assess our efforts using the unit rubric. Our

next SIP unit will start next week!

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「主体的・対話的で深い学び」は、2020年度より全面実施されている学習指導要領のキーワードでもあります。

しかし「学びが何をもって <深い> と言えるのか」は、とかく曖昧になりがちです。

私たちは、この SOLO Taxonomy を応用したルーブリックが唯一の正解とは全く考えていませんが、

広く一般の学校においても検討されるに値するアイディアだと思い、ここに紹介します。

本校の取り組みも発展途上ではありますが、引き続き前進していきたいと願っています。

 

 

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*参考:https://www.johnbiggs.com.au/academic/solo-taxonomy/